Case Study
AI活用のその先に目指すまごころある体験とは
170社の複雑な応対をAIで支え、新人育成と顧客満足を両立した秘訣
オーナーズエージェント株式会社
コンタクトセンター事業部オペレーションセンター エグゼクティブマネージャー 太田様 チーフマネージャー 岡野様
- 不動産
2026.05.21

御社と御社のコールセンターについて簡単に教えてください。
岡野様
当社は、不動産管理会社向けのコールセンターを運営しています。CS体制は約100名で、約170社の管理会社に対応しています。
決まりきった対応をなぞるのではなく、各社ごとに異なる運用や意図を踏まえ、必要に応じて業者手配や手続き案内まで行います。そこから先、何度も往復が発生する案件や、追加説明・解釈の案内までやり切るところまで対応し、問題が解消されるところまで伴走します。
単なる受付にとどまらず、管理会社が求める対応の深さまで担う点が、当社の競争優位性です。
導入前、コールセンターではどのような課題があったのか?
岡野様
管理会社は約170社あり、それぞれルールや対応方法が異なり入居者の多種多様なトラブルに対応が必要です。その中で最大の課題は、「どうナレッジに辿り着くか」でした。ナレッジ自体は存在しているものの、Excelなどに分散しており、検索してもすぐに見つからない。結果として、探すことに時間を使い、本来考えるべき「どう対応するか」に時間を使えない状態でした。
また、品質を上げようとするとテンプレートを増やす必要がありますが、増やすほど探せなくなり、結果として人依存が強くなる構造でした。ナレッジを整備すればするほど使いづらくなるというジレンマがありました。新人に関しても同様で、文章の書き方とナレッジ探索でつまずきやすく、立ち上がりに半年以上かかるケースも多くありました。単なる受付にとどまらず、管理会社が求める対応の深さまで担う点が、当社の競争優位性です。だからこそ課題がありました。

過去他社AIを導入されたが中止した経緯があると伺いました。何故その利用を中止したのでしょうか?
岡野様
他のツールも導入しましたが、うまくいきませんでした。
管理会社が170社あると、同じ案件でも回答が会社ごとに違います。電話では、「聞くだけ」になって、判断が必要なものは全部折り返し、結果として案件が増えました。現場にとっては、効率化どころか負担が増える結果になってしまったというのが正直なところです。業務も複雑だったこともありベンダーさんからは「170通りは組めない」「すごい時間がかかる」「追加でお金ください」と向こうから逃げて行ったり・実質的なお断りの連絡をいただいたこともありました。
そのような中、何故再度SureSideの導入を決めたのですか?決め手等教えてください。
岡野様
一番大きかったのは、業務理解から入ってきたことです。「まず現場を見せてください」と言われたのは初めてでした。当社の業務は口で説明しても伝わりにくいため、実際の現場を見た上で判断してもらえたことに納得感がありました。また、いきなり自動化を前提にしなかった点も大きかったです。不動産の領域では、入居者・管理会社・オーナーと複数の立場があり、必ずしも自動化が最適とは限りません。ナレッジ整備から入り、通話中・通話後の支援で現場に馴染ませ、その上で自動化を検討するという段階的なアプローチが現実的でした。
実際に導入されてみて、現場にはどのような変化がありましたか? 現場でのアンケートも実施されたと伺いましたが、特に印象的だった結果を教えてください。
岡野様
導入初月に、AHTが前月比20%ほど削減されたセグメントもあり、初動でも成果を実感しました。報告書は管理会社担当者だけでなくオーナー様など社外も目にするため、フォーマットや粒度への適合が求められます。ナレッジハブと連携した要約により、工数が大きく改善できました。
新人への影響も非常に大きく、AI導入後は最初の1週間で10件以上、メンバーによっては立ち上がり初期から20件近く対応できるようになりました。通常、一人前の目標は1日30件程度ですが、導入前は新人は覚えることや確認事項が多く、独り立ち初期は数件程度しか対応できないこともありました。立ち上がりのスピードは大きく改善しています。
他にも類似ツールはありますが、多くはAIが自由に要約文を生成するだけにとどまります。当社の業務では、報告書はクライアントである管理会社の担当者だけでなく、オーナー様など社外の方も目にする正式な文書です。そのため、トラブル内容に加えて、管理会社ごとのフォーマットや粒度に正確に合わせることが求められます。ナレッジハブと連携した要約だから、満足いくものができたと思います。
現場からは「使わない理由がない」「本当に便利」といった声が出ています。また、「後処理が格段に速くなった」「文章が伝わりやすくなった」といった実感も多く、特にメールやSMSの作成は大きく改善されています。電話においても、要約機能によって通話中のメモ負担が減り、入居者の話に集中できるようになりました。これにより、単なる効率化だけでなく、対応の質そのものにも変化が出ています。
今後、SureSideを使ってさらにやりたいことや、目指しているCS現場の姿があれば教えてください。
太田様
離職率の改善につながると考えています。明らかに新人の立ち上がりには効果が出ており、これまで課題だった初期のつまずきが大きく軽減されています。これまでは、能力があっても立ち上がりの負荷についていけず離れてしまうケースもありましたが、そのハードルは確実に下がっています。
採用が難しい中で、事業の成長に合わせて、人を増やしていかないといけない状況でもあったので、その手前の負荷で離れてしまう人を救えることは非常に価値が大きいと感じています。AIによってその部分を補完できることで、本来活躍できた人材を活かせる点は、経営的にも重要だと捉えています。また、人の強みを最大化することも重要だと考えています。私たちは、人の強みは「まごころ」にあると捉えています。これまでオペレーターは、目の前の対応をこなすことで精一杯になりがちでしたが、負荷が下がることで余裕が生まれ、「これもやっておきましょうか」と一歩踏み込めるようになっています。その一歩が、結果として顧客体験の質を高めることにつながると考えています。
今AI導入をお考えのCS部に対して、アドバイスがありましたら教えてください。
太田様
杓子定規なパッケージを当てはめるだけでは、現場には合わない時があると感じています。SaaSは便利ですが、前提が揃っていない現場では、逆にメンテナンス運用負荷が増えることもあります。
重要なのは、本当に業務を理解した上で、意味のあるAI活用を提案してくれるパートナーを選ぶことです。ナレッジ整備から始め、通話中・通話後の支援で現場に定着させ、その上で自動化を検討する——そうしたステップを踏めるかどうかが重要です。そして前提として、AIは目的ではなく、人の強さを引き出すためにあるものだと考えています。作業を任せることで余力が生まれ、人がより価値のある対応に集中できる。その積み重ねが、最終的な競争力につながると考えています。


