Case Study
2年以上の実践で見えた、AI活用の本質とは何か
DMMが試行錯誤の末にたどり着いた「定着するAI」の条件
合同会社DMM.com
カスタマサポート部 部長 牛丸様 カスタマサポート部 マネージャー 中川様
- IT
2026.05.21

DMMとDMMのコールセンターについて
中川様
DMMは60以上の事業を展開し、そのうち30〜40サービスのサポートを一括で担当しています。月間の問い合わせ件数は電話・メール合わせて約30,000件。24時間365日カスタマーの顧客満足度を維持しつつ、早急な応対が求められます。
DMMのコールセンターが抱えていた課題は?
中川様
多種多様なサービスを扱うがゆえに、オペレーター1人で30近くの異なるサービスの応対が必要となることもあります。そのような状況では、ナレッジは膨大なページ数になり、必要な情報を探し出すのに時間がかかります。該当するキーワードを覚えておいて検索しないと引っかからず、言い方を変えると出てこないという問題を抱えていました。
牛丸様
そのような状況下では、特に新人はナレッジ検索に時間がかかりやすくSVにエスカレーションを行っていました。SV側の質問・相談の負荷も大きい状態でした。
結果的にAIを導入するだけでは楽にならなかった
中川様
そのような状況を改善すべく、初期段階の2015年頃から、DMMはAIチャットボットの導入は検討していました。「AIが自動で学んでくれる」という触れ込みだったので、PoCを行いましたが、実態はシナリオベースで、すべて人が制御しなければならないものでした。
結局、数十事業を扱うDMMとしては学習やチューニングコストが膨大な割に精度が低く、導入を断念せざるをえませんでした。
牛丸様
その後も別のAIチャットボット開発を委託するなど模索を続けましたが、期待する成果は出ない状況でした。
SureSideの導入決め手は?
牛丸様
グループ会社ですが他社ともフラットに比較しました。複数のAIでPoCを実施し、精度と回答速度でSureSideが上回りました。加えて現場に入り込み業務理解から改善する伴走姿勢を評価しました。
導入後の変化は?
中川様
SureSide導入後、最も大きな変化はナレッジを探す手間が減ったこと。従来のドキュメントの目次を辿ったりキーワード検索に頼ったりする必要がなくなり、1件の対応にかかる時間が短縮されました。
- 全体で3割応対スピードが改善
- 過半数以上を占めるオペレーターが、AIの支援によってベテランのシニアオペレーターとほぼ同じ応対速度に
導入を進める中で見えてきたのは、AIが実際に成果を出せるものであっても、必ずしも現場で使われるとは限らないという点でした。最初は「今のやり方でできているからAIを使わなくてもいい」という声もありました。
定着のためにチームが行ったのは地道な説得と以下のような具体的な活用例の発信です。
- Algoage担当者による操作説明動画の制作・展開
- SVによるハンズオンの説明会
- 「こういう場面で使うと便利」という具体的ユースケースの共有
実際に向き合ってみると、AI利用に強い拒否感があるというよりも、「どの場面で使うと便利なのかが具体的にイメージできていない」ために、結果として使われていないケースが多いことが分かってきました。特に、ショート動画のように手軽に理解できる形で使い方を広める取り組みは効果が高く、実際に活用が進むきっかけになったと感じています。これは導入して初めて見えた、現場ならではのリアルな課題だったと感じています。

今後、SureSideを使ってさらにやりたいことや、目指しているCS現場の姿があれば教えてください。
中川様
現在強く感じているのは、CS部門においてナレッジの構造化・管理は不可欠だということです。これは最初から分かっていたわけではなく、Algoageと一緒にAI活用の試行錯誤を重ねる中で、実感として確信に変わっていきました。実際に、AIを使ってナレッジをうまく参照できているオペレーターほど、AHT(平均応対時間)が短くなっており、数字として差が出たことで、「ここまで違うのか」と驚かされました。
一方で、市場には「構造化されていないドキュメントでもそのまま読み込ませれば、チャットボットとして機能する」といった、いわば"魔法"のような訴求をするAI製品も多くあります。ただ、実際に現場で最先端の技術を使いながら試行錯誤してきた立場からすると、そうしたアプローチだけでうまくいくほど単純ではないと感じています。
ナレッジが構造化されていない状態では、AIの挙動を十分に制御することが難しく、ハルシネーションのリスクも避けられません。いわゆる生成AIのインターフェースを付け足しただけの仕組みでは、現場で安心して使い続けることは難しいと考えています。その点で、ナレッジハブとして情報を整理し、運用の中で改善し続けていくアプローチは現実的だと感じています。魔法のような解決策に頼るのではなく、現場が本当に使えるナレッジを整備することが、結果的にAIの精度向上にもつながります。現在では新しい取り組みとして、AI機能と現場の運用の両面から、日々の業務を通じてナレッジが改善され、それによって応対品質も向上していくという好循環を構築しようとしています。
そしてナレッジを整えると、それはチャットボットなどの自動化ソリューションにも繋がり、人にできないスピードで解決してくれる、という新たな価値が見込めます。問い合わせ自体が減ることで、今の人員で"攻め"の応対品質の向上や新たな挑戦にも取り組んでいけると良いと考えています。
今AI導入をお考えのCS部に対して、アドバイスがありましたら教えてください。
牛丸様
いよいよAI投資に対して、具体的な成果が求められるフェーズに入ってきたと感じています。単にPoCを行うのではなく、あるべき姿と現実のギャップを踏まえ、「何を検証するのか」「その結果をどう現場に活かすのか」まで設計することが重要です。また、この変化に対して自分ごととして取り組むのか、「とりあえずやっておいて」という姿勢で向き合うのかによって、今後の成果には大きな差が生まれると考えています。
AIは決して魔法のような技術ではありません。DMMでの取り組みを通じて、ナレッジやデータが整っていなければ、どれだけ優れたソリューションでも現場では機能しないことを強く実感しました。
単に自動化を提案するのではなく、ナレッジを整えるところから始め、現場で使い続けられる形に落とし込むことが大事です。このアプローチによって、CS全体が本質的にAIを活用できる状態に近づいていくと考えています。
ぜひその選択肢の1つに入れてみてはどうでしょうか。


